サーモグラフィカメラの画素数と測定距離の関係――現場で「見えるサイズ」を計算する方法

サーモグラフィカメラを選定する時に「画素数が高いほど良い」という理解で止まっている方が多いです。しかし現場で重要なのは「何メートル離れた場所から何ミリの異常を検知できるか」という実用的な数値です。この記事では画素数・IFOV・測定距離の関係を実務的に解説します。

画素数だけでは判断できない理由

サーモカメラの画素数は「センサーが持つ画素の総数」です。160×120・320×240・640×480などと表記されます。

しかし同じ320×240の画素数でも、レンズの視野角(FOV)によって「1画素が見える範囲」が全く変わります。つまり画素数だけでなく、FOVとの組み合わせで実際の分解能が決まります。


IFOVとは何か

IFOV(Instantaneous Field of View・瞬時視野角)は1画素が対応する視角をmrad(ミリラジアン)で表したものです。

計算式:IFOV[mrad] = FOV[rad] ÷ 画素数

IFOVの値が小さいほど、より細部を捉えられます。遠くの小さな異常を見逃さないためにはIFOVが小さい機種を選ぶ必要があります。


測定距離と検知サイズの計算

距離L[m]における1画素あたりのスポットサイズS[mm]は以下で求まります。

S[mm] = IFOV[mrad] × L[m]

例:IFOV = 1.14mrad、距離3mの場合

S = 1.14 × 3 = 3.42mm/画素

つまり3m離れた場所では3.42mm以上のサイズの異常を1画素で捉えられます。


温度精度に必要な画素数

対象物の温度を正確に測定するには、対象物が最低でも3×3画素以上をカバーする必要があります。

正確な温度測定に必要な最小対象サイズ = IFOV × L × 3

例:IFOV = 1.14mrad、距離5mの場合

最小対象サイズ = 1.14 × 5 × 3 = 17.1mm以上


FOTRICモデル別の実用距離

比較表のデータをもとに整理します。

モデルIFOV距離3m距離5m距離10m
TK72.23mrad6.7mm11.2mm22.3mm
TK81.14mrad3.4mm5.7mm11.4mm

※正確な温度測定には上記の3倍以上のサイズが必要です。


現場での選定基準

電気設備点検(受配電盤・ブレーカー) 測定距離1〜3m・対象サイズ10〜50mm程度が多いです。IFOV 2.0mrad以下のモデルが適しています。

回転機・モーター点検 測定距離2〜5m・対象サイズ20〜100mm程度。IFOV 2.5mrad以下で対応可能です。

高所配管・屋根点検 測定距離5〜20m・対象サイズ100mm以上。IFOVより広い視野角(FOV)を優先します。

半導体・精密部品点検 測定距離0.1〜0.5m・対象サイズ1〜5mm程度。IFOV 1.5mrad以下かつマニュアルフォーカス対応モデルが必要です。


SuperResolution(超解像)の効果と注意点

FOTRICの一部モデルに搭載されているSuperResolution(SR)は、ソフトウェア処理により保存画像の画素数を疑似的に増やす技術です。

効果: 保存後の静止画の見た目の解像度が上がります。細部の確認がしやすくなります。

注意点: あくまで保存後の静止画への処理です。ライブ映像の分解能は変わりません。IFOVの実測値も変わらないため、検知できる最小サイズ自体は変わりません。


まとめ

  • 画素数だけでなくIFOVと測定距離の組み合わせで実用性が決まる
  • S[mm] = IFOV[mrad] × L[m] で1画素あたりのスポットサイズを計算できる
  • 正確な温度測定には対象物が3×3画素以上をカバーする必要がある
  • 用途・測定距離・対象サイズに合わせてモデルを選定する
  • SuperResolutionは静止画の見た目を改善するが検知性能自体は変わらない

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