「突発停止はたまにしか起きない」という理由で予知保全への投資を後回しにしている工場は多いです。しかし突発停止は頻度より1回あたりの被害額が問題です。この記事では突発停止1回の被害額を試算して予知保全の投資対効果を解説します。
突発停止1回の被害額の内訳
突発停止が発生した場合の被害は以下の要素で構成されます。
①生産ロス 停止時間中に生産できなかった製品の損失です。業種・設備によって大きく異なりますが製造業では1時間あたり数十万〜数百万円になるケースがあります。
②修理費用 部品代・修理作業費・外注費です。緊急対応の場合は通常より割高になることが多いです。
③廃棄ロス 停止時に仕掛中だった製品・原材料の廃棄コストです。
④残業・休日出勤コスト 復旧作業・遅れた生産の取り戻しのための時間外労働コストです。
⑤二次被害 停止した設備の影響で他の設備・工程にも影響が出るケースです。特に連続ラインでは波及効果が大きくなります。
業種別の突発停止被害額の目安
| 業種 | 1時間あたりの生産ロス目安 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 自動車工場 | 数百万円〜 | ライン全体が止まる |
| 半導体工場 | 数百万円〜 | 仕掛品の全廃棄リスク |
| 化学プラント | 数十万〜数百万円 | 再起動に時間がかかる |
| 食品工場 | 数十万〜数百万円 | 廃棄ロスが大きい |
| 一般製造業 | 数万〜数十万円 | 設備規模による |
具体的な被害額の試算例
ケース1:自動車工場の溶接ロボット停止
溶接ロボットのモーター過熱による突発停止が発生した場合を想定します。
- 停止時間:4時間
- 生産ロス:200万円/時間 × 4時間 = 800万円
- 修理費用:50万円(緊急対応)
- 廃棄ロス:30万円
- 残業コスト:20万円
- 合計被害額:約900万円
サーモカメラによる定期点検(年間数回)でモーターの異常発熱を早期発見して計画修繕すれば、この900万円の損失を防げた可能性があります。
ケース2:食品工場の充填ラインポンプ停止
充填ラインの主要ポンプが突発停止した場合を想定します。
- 停止時間:6時間
- 生産ロス:30万円/時間 × 6時間 = 180万円
- 廃棄ロス(仕掛品):50万円
- 修理費用:30万円
- 残業コスト:15万円
- 合計被害額:約275万円
ケース3:化学プラントのコンプレッサー停止
圧縮空気の供給が止まりプロセス全体に影響が出た場合を想定します。
- 停止時間:8時間(再起動含む)
- 生産ロス:50万円/時間 × 8時間 = 400万円
- 修理費用:80万円
- 再起動コスト:30万円
- 合計被害額:約510万円
突発停止は年1回でも投資対効果が成立する
予知保全への投資判断で重要なのは頻度ではなく1回あたりの被害額です。
突発停止が年1回しか起きなくても被害額が500万円であれば、年間500万円の損失リスクがあります。
サーモカメラ・音響カメラの導入コストと比較すると、多くの場合1回の突発停止を防ぐだけで投資回収できる計算になります。
突発停止の前兆をサーモカメラで発見する
電気系統・回転機の突発停止の多くは事前に発熱という前兆が現れます。
電気系統の場合 接続部の緩み・絶縁劣化による異常発熱は突発停止の数週間〜数ヶ月前から現れます。定期的なサーモ点検で発見して計画修繕することで突発停止を防げます。
回転機の場合 ベアリングの劣化による発熱は突発停止の数日〜数週間前から現れます。温度トレンドを監視することで交換タイミングを予測できます。
稟議を通すための考え方
予知保全への投資稟議を通す際は以下の計算式を使います。
投資対効果 = 突発停止1回の被害額 × 年間発生リスク ÷ 導入コスト
例えば被害額500万円・年1回のリスクがある設備であれば年間500万円のリスクがあります。導入コストがそれ以下であれば投資対効果が成立します。
「滅多に起きない」ではなく「1回起きたらいくら損するか」という視点で説明することが稟議を通すポイントです。
まとめ
- 突発停止の問題は頻度より1回あたりの被害額の大きさ
- 業種によっては1回の停止で数百万〜数千万円の損失になるケースがある
- 生産ロス・修理費・廃棄ロス・残業コスト・二次被害を合計すると被害額は想定より大きい
- 年1回の突発停止を防ぐだけでサーモカメラ・音響カメラの投資回収ができるケースが多い
- 稟議には「頻度」より「1回の被害額」を前面に出す
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