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タイトル:サーモカメラで「正確な温度」より「温度差」を見るべき理由――現場での正しい判断基準
スラッグ:thermography-temperature-difference-judgment
カテゴリー:サーモグラフィ・予知保全
サーモカメラの現場でよくある誤解が「正確な温度を測定しなければならない」というものです。実際には絶対温度より温度差・温度ムラを見ることの方が現場での診断精度が上がります。この記事ではその理由と正しい判断基準を解説します。
サーモカメラの本来の目的
サーモカメラは精密な温度計ではありません。現場での主な用途は以下の通りです。
- 異常発熱箇所の発見
- 温度ムラの可視化
- 同種設備との温度差の比較
これらはすべて「絶対温度が何℃か」ではなく「周囲と比べてどれだけ温度差があるか」という相対的な判断です。
放射率設定が難しい理由
サーモカメラの測定精度は放射率設定に大きく影響されます。しかし現場の設備は様々な素材が混在しています。
例えば受配電盤の中には以下の素材が混在しています。
- ブレーカー本体:黒色プラスチック(放射率約0.95)
- バスバー:光沢銅(放射率約0.05〜0.10)
- ケーブル被覆:黒色ゴム(放射率約0.90〜0.95)
- 筐体:塗装鋼板(放射率約0.90〜0.95)
これらが混在する画面で1つの放射率を設定しても全ての素材に対して正確な絶対温度を測定することは不可能です。
中間値設定では解決しない
「異なる素材が混在しているなら中間の放射率に設定すればいいのでは」という考え方があります。しかしこれは解決策になりません。
例えばプラスチック(放射率0.95)と光沢銅(放射率0.05)が混在する場合に中間値(約0.50)に設定すると以下の問題が起きます。
- プラスチックは実際より低い温度が表示される
- 光沢銅は実際より高い温度が表示される
両方とも誤差が出るだけでなく誤差の方向が逆になります。これでは比較がさらに難しくなります。
正しいアプローチ:同種部品同士を比較する
現場での正しいアプローチは同種の素材・同種の部品同士を比較することです。
同種部品同士であれば放射率が同じです。放射率設定がずれていても両方に同じ影響が出るため、温度差の比較は正確に行えます。
具体的な比較方法
- ブレーカーAとブレーカーBを比較する
- バスバーAとバスバーBを比較する
- モーターAとモーターBを比較する
- 同一回路の左右の端子を比較する
異なる素材を直接比較しようとしないことが誤判定を防ぐ最大のポイントです。
温度差による判定基準
同種部品同士の温度差で異常を判定する基準は以下の通りです。
電気設備の場合
| 温度差 | 判定 | 対応 |
|---|---|---|
| 1〜10℃ | 軽度異常 | 次回点検時に注意 |
| 10〜40℃ | 中度異常 | 早期対応を推奨 |
| 40℃以上 | 重度異常 | 早急な対応が必要 |
回転機・モーターの場合
| 温度差 | 判定 | 対応 |
|---|---|---|
| 10℃以下 | 正常範囲 | 定期監視継続 |
| 10〜20℃ | 要注意 | 監視頻度を上げる |
| 20℃以上 | 異常 | 早期点検・原因調査 |
絶対温度が重要になるケース
温度差での判断が基本ですが絶対温度が重要になるケースもあります。
①判定基準が絶対温度で決まっている場合 社内規程や業界規格で「80℃以上は異常」などの絶対温度基準がある場合です。この場合は放射率を正確に設定した上で測定する必要があります。
②初回点検で基準値を設定する場合 正常時の基準温度を記録する場合は絶対温度の精度が重要です。黒体テープや接触式温度計と併用して正確な温度を記録してください。
③異なる設備間での比較が必要な場合 同種設備がなく他の設備との比較しかできない場合は放射率設定の影響を考慮した上で判断する必要があります。
まとめ
- サーモカメラの現場での主な目的は絶対温度測定ではなく温度差・温度ムラの検知
- 異なる素材が混在する現場では1つの放射率設定で全素材を正確に測定することは不可能
- 中間値設定は両方の素材に逆方向の誤差をもたらすため解決策にならない
- 正しいアプローチは同種部品同士の温度差で比較すること
- 放射率が同じ同種部品同士であれば放射率設定のずれが比較結果に影響しない
- 絶対温度が必要なケースは黒体テープ・接触式温度計と併用する
サーモカメラの正しい使い方・現場での判断基準についてのご相談はお気軽にお問い合わせください。

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