受配電盤のサーモグラフィ点検で「見落とし」を防ぐ撮影手順と判定基準

受配電盤の活線点検はサーモグラフィの最も代表的な用途の一つです。しかし「撮影したけど何が正常で何が異常かわからない」「反射が多くて正しく測定できているか不安」という声を現場でよく聞きます。この記事では見落としを防ぐ撮影手順と判定基準を解説します。

なぜ受配電盤の点検にサーモグラフィが有効か

受配電盤の異常発熱は以下の原因で発生します。

  • 接続部の緩み・酸化による接触抵抗の増加
  • 過負荷による導体の発熱
  • 絶縁劣化による漏れ電流
  • ブレーカー・開閉器の内部劣化

これらは目視では発見できず、放置すると火災・停電・生産停止につながります。サーモグラフィは非接触・非停止で異常発熱を可視化できるため、活線状態のまま安全に点検できます。


撮影前の準備

①負荷状態を確認する サーモグラフィ点検は負荷がかかっている状態で実施します。負荷が低い状態では異常発熱が現れにくく、見落としの原因になります。可能であれば通常運転時の70%以上の負荷がかかっている時間帯を選んでください。

②放射率を設定する 金属部品の放射率は素材・表面状態によって大きく異なります。

対象放射率の目安
黒色塗装面0.95
酸化した銅0.70〜0.80
光沢のある銅0.05〜0.15
アルミ(酸化)0.20〜0.40
プラスチック0.85〜0.95

光沢のある金属はデフォルト値(0.95)のままでは温度が大幅に低く表示されます。必ず対象に合わせた放射率に変更してください。

③撮影アングルを決める 金属面への入射角が大きいと反射ノイズが増えます。できるだけ正面から撮影し、斜め45度以上のアングルは避けてください。


撮影手順

Step1:扉を開けて全体をスキャン まず盤全体を広く撮影して全体の温度分布を把握します。高温部位がないか確認します。

Step2:怪しい箇所に近づいて詳細撮影 全体スキャンで高温部位が見つかった場合、近づいて詳細撮影します。この時に放射率設定を確認してください。

Step3:参照温度を記録する 異常部位の温度だけでなく、正常な同じ部品の温度も記録します。温度差で判定するためです。

Step4:可視光カメラと組み合わせる サーモ画像だけでなく可視光画像も同時に記録することで、報告書作成と後からの確認が容易になります。


判定基準

国際規格・業界標準をもとにした一般的な判定基準です。

同一回路内の同種部品との温度差で判定

温度差判定対応
1〜10℃軽度異常次回点検時に注意・記録
10〜40℃中度異常早期対応を推奨・負荷軽減検討
40℃以上重度異常早急な対応が必要

絶対温度での判定目安

絶対温度判定
〜60℃正常範囲
60〜80℃要注意
80℃以上異常・要対応

よくある誤判定のパターン

①反射による偽陽性 光沢のある金属が周囲の熱源を反射して高温に見える現象です。撮影アングルを変えて確認することで判断できます。アングルを変えても同じ箇所が高温であれば本物の異常です。

②負荷不足による見落とし 低負荷時に点検すると異常発熱が現れず、正常と判断してしまうケースがあります。できるだけ高負荷時に点検してください。

③放射率設定ミスによる誤差 デフォルト値のまま光沢金属を測定すると実際より10〜30℃低く表示されることがあります。


点検記録に残すべき項目

  • 点検日時・環境温度・湿度
  • 負荷状態(電流値)
  • 放射率設定値
  • 撮影距離・アングル
  • 異常部位の温度・正常部位の温度・温度差
  • サーモ画像・可視光画像
  • 判定結果・推奨対応

まとめ

  • 負荷がかかっている状態で点検する
  • 放射率設定は対象素材に合わせて変更する
  • 温度差10℃以上は早期対応を推奨
  • 反射による偽陽性はアングルを変えて確認する
  • サーモ画像と可視光画像をセットで記録する

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