音響カメラの導入を検討している現場担当者から「各メーカーの違いがわからない」という相談をよく受けます。この記事では主要4メーカーのスペックと特徴を中立的な立場で比較します。
比較する4メーカーの概要
FOTRIC アメリカに本社を置くメーカーです。音響カメラとサーモカメラの両方を製造しています。エントリーモデルから高性能モデルまで幅広いラインナップを持ち用途・予算に合わせた選択が可能です。
FLIR アメリカのTeledyne FLIR社です。サーモカメラで世界的に有名なメーカーで音響カメラも製造・販売しています。
FLUKE アメリカの計測機器メーカーです。電気・電子測定器で世界的なブランドを持ちます。音響カメラ(iiシリーズ)を展開しています。
JFE 日本のJFEエンジニアリングが製造・販売する音響カメラです。国産メーカーとして日本市場での実績があります。
スペック比較表
エントリー〜ミドルモデル
| 項目 | FOTRIC TD2e Kit | FOTRIC H4 mini | FLUKE ii900 | JFE MK-750ST |
|---|---|---|---|---|
| マイク数 | 64個 | 112個 | 64個 | ー |
| 周波数帯域 | 2k〜100kHz | 2k〜100kHz | 2k〜52kHz | 40kHz固定 |
| 測定距離 | 0〜60m | 0.3〜100m | 0.5〜70m | 〜20m |
| 重量 | 770g | 770g | 2.15kg | 740g |
| 放電検知 | ✕ | ✕ | △ | ✕ |
| ガスリーク検知 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ハイエンドモデル
| 項目 | FOTRIC H4 | FOTRIC H6 | FLIR Si1-LD | FLUKE ii910 |
|---|---|---|---|---|
| マイク数 | 112個 | 162個 | 96個 | 64個 |
| 周波数帯域 | 2k〜100kHz | 2k〜100kHz | 2k〜100kHz | 2k〜100kHz |
| 測定距離 | 0.3〜200m | 0.3〜200m | 0.3〜130m | 0.5〜120m |
| 重量 | 1.3kg | 1.3kg | 1.45kg | 2.15kg |
| 放電検知 | ◎ | ◎ | ✕ | ◎ |
| ガスリーク検知 | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 |
各メーカーの特徴
FOTRIC アメリカ本社のメーカーとして品質基準を維持しながら幅広い価格帯のラインナップを提供しています。2k〜100kHzの広帯域に対応しており現場の騒音環境に合わせた周波数帯域の設定が可能です。
実際にコンビナートのような騒音が激しい環境でデモを実施した際、周波数帯域を高め(40kHz以上)に設定することで稼働中のラインから複数の漏れ箇所を特定できた実績があります。
放電検知はH4以上のモデルから対応しています。エントリーモデルのTD2e KitとH4 miniはエア漏れ・ガスリーク検知に特化したモデルです。音響とサーモを1台に統合したVMiXシリーズは他社にはない独自のモデルです。エントリーモデルは770gの軽量設計で片手操作が可能です。
FLIR サーモカメラで世界的な実績を持つメーカーです。Si2-Proは2k〜130kHzの広帯域に対応しています。ただし放電検知については一部モデルで非対応となっています。サーモカメラとの組み合わせを重視する現場に向いています。
FLUKE 電気・電子測定器で世界的なブランド力を持ちます。ii900シリーズは2k〜52kHzの周波数帯域に対応しています。ただし周波数帯域がFOTRICと比較して狭く騒音が多い低周波帯域を除外した高周波帯域での検知に制約があります。重量が2.15kgと重めで長時間の点検作業では注意が必要です。
JFE 国産メーカーとして日本市場での実績があります。周波数帯域が40kHz固定のため現場の騒音状況に合わせた帯域調整ができません。騒音が激しい環境では検知精度への影響が考えられます。測定距離が最大20mと他社より短いため点検距離に制約があります。バッテリー駆動時間は8時間と長く長時間点検に向いています。
選定のポイント
①周波数帯域の柔軟性 騒音が激しい現場では周波数帯域を調整できる機種が有利です。40kHz固定や2k〜52kHzの機種は騒音環境での柔軟な対応が難しい場合があります。
②放電検知の必要性 電気設備の放電検知も実施したい場合は対応モデルを選ぶ必要があります。放電検知が必要な場合はFOTRIC H4以上・FLUKE ii910以上を選定してください。FLIR Si1-LD・JFE MK-750ST・FOTRIC TD2e Kit・FOTRIC H4 miniは放電検知非対応です。
③重量・操作性 1日中点検する現場では重量が重要です。2kg超の機種は長時間使用で疲労が大きくなります。高所作業・梯子作業が多い現場では特に注意が必要です。
④測定距離 高所配管・広大なプラントでは測定距離が長い機種が必要です。JFEの最大20mは大規模施設では制約になる可能性があります。
⑤価格帯とスペックのバランス 同等のマイク数・スペックでも価格差が大きい場合があります。スペックと価格のバランスを確認することが重要です。
用途別推奨モデル
| 用途 | 推奨モデル | 理由 |
|---|---|---|
| まず試してみたい | FOTRIC TD2e Kit | 手の届く価格帯・軽量・エア漏れ検知に必要な性能を備えている |
| 高騒音環境での点検 | FOTRIC H4以上 | 広帯域・高マイク数・帯域設定が柔軟 |
| 放電検知も必要 | FOTRIC H4・FLUKE ii910以上 | 放電検知対応モデル |
| 広大なプラントの点検 | FOTRIC H6・H7 | 測定距離200〜300m・高マイク数 |
| 音響+サーモを1台で | FOTRIC VMiX | 世界唯一の統合モデル |
まとめ
- 各メーカーで周波数帯域・マイク数・測定距離・重量に差がある
- 周波数帯域が固定・狭いモデルは騒音環境での柔軟な対応が難しい
- 放電検知はFOTRIC H4以上・FLUKE ii910以上が対応
- FOTRIC TD2e Kit・H4 mini・FLIR Si1-LD・JFE MK-750STは放電検知非対応
- 重量は長時間点検の作業効率と安全性に直結する
- 用途・現場環境・予算に合わせた選定が重要
音響カメラの選定相談・現場デモを無償で承っています。お気軽にご連絡ください。

コメント