超音波の原理――音響カメラがなぜエア漏れを見つけられるか

音響カメラがエア漏れを発見できる仕組みを理解することで、現場での使い方や限界を正しく把握できます。この記事では超音波の基礎から音響カメラの動作原理までを解説します。

超音波とは何か

音は空気などの媒体を伝わる波(疎密波)です。人間が聞こえる音の周波数範囲は20Hz〜20kHzです。これを可聴音と呼びます。

超音波とは20kHz以上の周波数の音波のことです。人間の耳には聞こえませんが、空気中を伝わる物理的な波であることは可聴音と同じです。


エア漏れが超音波を発生させる仕組み

圧縮空気が小さな穴から漏れる時、乱流が発生します。この乱流が広い周波数帯域の音波を発生させます。

発生する音波の周波数帯域は以下の通りです。

  • 可聴音帯域(20Hz〜20kHz):工場の騒音に埋もれる
  • 超音波帯域(20kHz以上):工場騒音より少ない

つまりエア漏れは可聴音と超音波の両方を発生させますが、工場の騒音環境では可聴音帯域はノイズに埋もれてしまいます。超音波帯域を使うことで騒音環境でもエア漏れを検知できます。


音響カメラの動作原理

音響カメラは以下の3つの技術を組み合わせてエア漏れ箇所を可視化しています。

①マイクロフォンアレイによる音波の受信 複数のマイクロフォンを配列(アレイ)状に並べることで、異なる位置から同じ音源の音波を同時に受信します。音源が異なる方向にある場合、各マイクへの音波の到達時間が微妙に異なります。

②ビームフォーミングによる音源方向の特定 各マイクへの音波の到達時間差(位相差)を計算することで、音源がどの方向にあるかを特定します。これをビームフォーミングと呼びます。

マイク数が多いほど・パネルサイズが大きいほど位相差の計算精度が上がり、音源の方向をより正確に特定できます。

③カメラ映像への重畳表示 特定した音源の方向をカメラ映像に重ねて表示します。画面上で音が強い方向が明るく表示されるため、どこから音が出ているか視覚的に確認できます。


周波数帯域の選択が重要な理由

音響カメラは分析する周波数帯域を設定できます。用途に合わせた帯域設定が重要です。

用途推奨周波数帯域理由
エア漏れ検知20〜60kHzエア漏れ音が強い帯域
ガスリーク検知20〜60kHzガス漏れ音が強い帯域
放電検知40〜100kHz放電音が強い帯域

低い周波数帯域では工場騒音の影響を受けやすくなります。高い周波数帯域では距離減衰が大きくなります。用途に合わせた最適な帯域設定が検知精度に直結します。


音響カメラの限界

原理を理解することで限界も把握できます。

①距離減衰 超音波は可聴音より距離減衰が大きいです。遠距離になるほど音圧が低下し検知が難しくなります。これが測定距離の上限が存在する理由です。

②指向性 超音波は指向性が強く、音源と検知方向がずれると検知精度が下がります。

③障害物 壁・配管・設備などの障害物があると音波が遮られます。障害物の陰にある漏れ箇所は検知が難しい場合があります。

④温度・湿度の影響 空気中の音速は温度・湿度によって変化します。極端な温度環境では測定精度に影響が出る場合があります。


まとめ

  • エア漏れは乱流により超音波帯域の音波を発生させる
  • 超音波帯域を使うことで工場騒音に埋もれずにエア漏れを検知できる
  • 音響カメラはマイクアレイ・ビームフォーミング・カメラ映像重畳の3技術を組み合わせている
  • マイク数が多いほど・パネルサイズが大きいほどビームフォーミング精度が上がる
  • 距離減衰・障害物・温度の影響が音響カメラの限界として存在する

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