赤外線の原理――サーモカメラがなぜ温度を測れるか

サーモカメラがどうやって温度を測定しているのかを理解することで、現場での正しい使い方と誤測定を防ぐポイントがわかります。この記事では赤外線の基礎からサーモカメラの動作原理までを解説します。

赤外線とは何か

電磁波は波長によって様々な種類に分類されます。可視光線は人間の目で見える波長(380〜780nm)の電磁波です。

赤外線は可視光線より波長が長い(780nm〜1mm)電磁波です。人間の目には見えませんが熱として感じることができます。太陽の光に当たると暖かく感じるのは赤外線の影響です。


すべての物体は赤外線を放射している

温度が絶対零度(-273℃)より高いすべての物体は赤外線を放射しています。これを熱放射と呼びます。

熱放射には以下の特徴があります。

①温度が高いほど放射量が多い 温度が高い物体ほど多くの赤外線を放射します。

②温度によって放射する波長が変わる 温度が低い物体は波長の長い赤外線を放射します。温度が高い物体は波長の短い赤外線を放射します。物体が非常に高温になると可視光線(赤色)を放射し始めます。これが「赤熱」と呼ばれる現象です。


サーモカメラの動作原理

サーモカメラは物体から放射される赤外線を検出して温度を計算します。

①赤外線センサーによる検出 サーモカメラの中心部には赤外線センサー(フォーカルプレーンアレイ)があります。このセンサーが物体から放射される赤外線の強度を画素ごとに検出します。

②温度への変換 検出した赤外線の強度から温度を計算します。この計算にはステファン・ボルツマンの法則が使われます。

③熱画像の生成 各画素の温度を色で表現した熱画像を生成します。一般的に高温部分を赤・低温部分を青で表示します。


放射率が測定精度に与える影響

ここが現場で最も重要なポイントです。

物体が放射する赤外線の量は温度だけでなく「放射率」によっても変わります。放射率とは物体が理想的な放射体(黒体)と比べてどれだけ赤外線を放射するかを示す値で0〜1の間の数値です。

黒体(放射率1.0) 理論上最も効率よく赤外線を放射する物体。実際には存在しません。

現実の物体 ほとんどの物体は放射率が1.0より低いです。

素材放射率の目安
黒色塗装0.95
人間の皮膚0.98
コンクリート0.95
酸化した鉄0.70〜0.80
光沢のあるアルミ0.05〜0.15
光沢のある銅0.05〜0.10

カメラの放射率設定が実際の物体の放射率と異なると温度表示が大きくずれます。デフォルト値(多くのカメラで0.95)のまま光沢金属を測定すると実際より大幅に低い温度が表示されます。


反射の影響

放射率が低い物体(光沢金属など)は周囲の赤外線を反射します。これが現場での誤測定の主な原因です。

例えば光沢のある金属面が高温の設備や照明の赤外線を反射すると、実際には正常温度でも高温に見えてしまいます。

反射の影響を減らす対策は以下の通りです。

  • 撮影アングルを正面に近づける
  • 黒体テープを貼って放射率を高める
  • 反射源となる熱源を遮蔽する

NETDとは何か

NETD(Noise Equivalent Temperature Difference・雑音等価温度差)はサーモカメラが識別できる最小の温度差です。

NETDが小さいほど微小な温度差を検知できます。FOTRICのTK5〜TK8は全モデルNETD 40mK(0.04℃)を実現しており、わずか0.04℃の温度差も識別できます。


まとめ

  • すべての物体は温度に応じた赤外線を放射している
  • サーモカメラは赤外線センサーで放射赤外線を検出して温度を計算する
  • 放射率の設定が測定精度に大きく影響する
  • 光沢金属はデフォルト放射率では誤測定になるため必ず設定を変更する
  • 反射による誤測定を防ぐには撮影アングルと放射率設定が重要

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